映像記録用のSD規格

SDメモリカードの実際の書き込み速度は各SDメモリカードメーカーやブランドによってばらつきがあり、どのカードを使用すればストリーミングコンテンツを確実に録画できるかを見分けるのは困難です。ビデオ録画で必要なのは録画を続けても「フレーム落ち」が発生しない最低限の書込み速度であり、これによりスムーズなビデオ再生が可能になります。SDアソシエーションではビデオ記録品質向上に応えるための各種スピードクラス規格を定義し、ホストデバイスが示すスピードクラスと同等かそれ以上のスピードクラスのカードをスピードマークで選択することによって、フレーム落ちのない確実な録画ができる最適なホストデバイスとカードの組み合わせを判断可能にしました。

すべてのスピード クラスは、規格で定義された条件下でマルチ ストリーム アクセス (SD Express スピード クラス規格対応) を含む、最低限のシーケンシャル カード アクセス性能を保証します。 これはビデオ録画やその他のアプリケーションにとって最も重要です。 また、シーケンシャル アクセス性能の最低保証速度を必要とするRead/Writeアプリケーションにも適用できます。

スピードクラス表記は4種類あります。

スピードマークには、スピードクラス*、UHSスピードクラス**、ビデオスピードクラス***、SD Expressスピードクラス****の4種類があり、マークに数値を組み合わせて最低限の書込みスピードを表しています。主にカムコーダー、ビデオレコーダーおよびビデオ録画機能を備えたデバイスに有効な機能です。

バスモードに関しては、メモリライト性能に影響しないレベルの高速なバスモードが使用される必要があり、C10はハイスピードモード以上、U1, U3は、UHS-Iモード(SDR50/DDR50)以上、V60/V90はUHS-IIモード、そしてE150/E300/E450/E600はSD Expressのバスモードで使用されます。

ビデオスピードクラスは、4K8K等の高画質・高品質映像記録の要求に応える規格として策定され、3D NANDなどの次世代フラッシュメモリに対応しているという重要な特徴があります。

さらに、SD Expressスピードクラスはマルチストリームアクセスもサポートします。様々なスピードクラスを推進する主な理由は、NANDフラッシュメモリ技術進化です。

初期のスピードクラスであるスピードクラスとUHSスピードクラスは古いメモリ技術向けに最適化しましたが、最新のビデオスピードクラスとSD Expressスピードクラスは両方とも最新のNANDフラッシュ技術向けに最適化しています。

SD Expressスピードクラスは、ビデオスピードクラスのアクセス方法と同じ概念に基づいており、次のような機能を備えています。
– NVMeプロトコルでの使用を定義
– マルチストリームアクセスをサポート
– スピードクラスのサポート用に最適化された電力および温度管理。

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スピードクラスにはClass2, 4, 6, 10があります。Class10は、ハイスピードバスIFの製品に実装可能です。
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UHSスピードクラスにはUHSスピードクラス1および3があります。UHSスピードクラスはUHSバスIF製品(UHS-I, UHS-II, UHS-III)に実装可能です。
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ビデオスピードクラスにはV6,10,30,60,90があります。V6, 10はハイスピードおよびUHSバスIF製品、V30はUHSバスIF製品、V60とV90はUHS-IIおよびUHS-III バスIF製品に実装可能です。
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SD ExpressスピードクラスにはE150/E300/E450/E600があります。SD ExpressバスIF製品に実装可能です。

SDスピードクラス一覧


ビデオ録画方式

*イントラビデオは1フレーム単位で圧縮する技術で、より高画質記録が可能であり通常はデータサイズが大きくなります。

スピードクラスのホストデバイスとカードの最適な組み合わせ

最高画質で記録するために必要なスピードクラスは、ホストデバイスのパッケージ・マニュアルに表示されており、したがって同等かそれ以上のパフォーマンスを持つカードを使用すれば、最高画質またはすべての選択可能な画質で記録することができます。ユーザーは個々のホストデバイスに、スピードクラスによる最適な性能を持つメモリカードを選択する必要があります。

例えば、使用するホストデバイスがスピードクラス4のSDメモリカードを要件としている場合、スピードクラス4、6または10のSDメモリカードを使用することができます。使用するホストデバイスがUHSスピードクラス1のSDメモリカードを要件としている場合、UHSスピードクラス1または3のSDメモリカードを使用することができます。ビデオスピードクラスとSD Expressスピードクラスも同様です。ただし異なるマークの組み合わせ、例えばClass10, U1およびV10では、同じ10MB/secの書込みスピードを表してはいますが、期待する書込みスピードは得られません。

(すなわち、V10を必要とするホストデバイスはV30カードでも動作し、同様にSD ExpressスピードクラスE150を必要とするホストデバイスではE300の様により高速なSD Expressスピードクラスをサポートするカードでも動作します。)

記憶領域の断片化と速度

ファイルの記録と消去を繰り返すことでデータ格納領域は徐々に断片化していき、書込みスピードが影響を受けます。一般的に断片化した領域への書き込みスピードは、シーケンシャルライトスピードに比べて低下します。メモリ容量が小さかった時代は、断片化した領域も使用することを想定する必要がありましたが、十分大きな容量のメモリカードを使用できる現在では、「Free AU」と呼ぶ断片化していない領域にシーケンシャルライトを行う方式が採用されています。それによりホストデバイスのスピードクラス制御は容易になりますが、全体としてまだ空き領域があるにもかかわらず録画ができなくなってしまう可能性があります。こういった場合の対策として、断片化がなくなるようにデータを並べ替えるか、メモリカード上のデータを他のストレージデバイスに移動しカードを初期状態に戻す方法があります。ビデオスピードクラスは、シーケンシャルライトの中断・再開ができる「サスペンド/リジューム」機能を使うことで、メモリ使用率を大幅に向上させることが可能になりました。